吸血鬼小説
いま店ではハロウィンという理由付けで「西洋の怪物」という特集をしています。そこで中心になっている、吸血鬼小説の古典を少し紹介します。
創元推理文庫でも対になっている二作品。ブラム・ストーカーの作品(1897)は今さら内容について言うことはないでしょうが、すべてが手紙や日記、新聞記事という体裁で綴られているため、盛り上がりに欠けるかもしれません。レ・ファニュの作品(1871)は中編で、小説としてはこちらの方がよくできていると思います。そもそも『吸血鬼ドラキュラ』が書かれる動機になった作品ということからも、古典として扱う理由がありますが、女性が女性の吸血鬼に襲われる筋なので、両者のその後の取り上げられ方に差が出ているかもしれません。
ここに収録されているジョン・ポリドリの「吸血鬼」(1819)はあの『フランケンシュタイン』と同じ機会に創作されたというエピソードでも有名です。この作品から十九世紀前半の吸血鬼ブームが起きたということで、古典にふさわしいと思います。もっともその吸血鬼は、死体になったのに生き返ったらしいという点以外、結婚詐欺師に近い存在です。
あと一点、現代の作品も取り上げると、店ではキングの『呪われた町』やアン・ライスの『夜明けのバンパイア』も並べていますが、あえて2016年のこちらの作品を紹介します。
十九世紀半ばのポーランドの田舎で吸血鬼がどんなものだったか、それを説得力を持って描き、さらに巧妙に小説として処理しています。できれば新刊で買って欲しい本です。
- 作者: 佐藤亜紀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/01/26
- メディア: 単行本
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